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【レビュー】:NHKドラマ「ハゲタカ」

 2007年にNHKで放映されたドラマ「ハゲタカ」をDVDで見返しました。
 いやぁ、やはり凄いドラマです。硬派な社会派ドラマが好きな私としては、NHKの土曜ドラマ枠はイチオシなのですが、その中でも抜群の出来でしたね。
 この作品については以前別の場でレビューを書いたので、そちらを加筆・訂正してこちらに転記します。かなり長文で、しかも過去の自分のことを書いているので、少々気恥ずかしいのですけどね^^;

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 15年近く前の話ですが、私はコンシューマ・ゲームマシンのゲームを製作するメーカーに在籍していました。当時のコンシューマゲーム市場はプレーステーションとサターンがしのぎを削っており、ファミコン登場以来の活況を呈しておりました。プレステが売れ過ぎて、供給が追いつかなかった(店頭で品切れが続出した)ことを覚えている方もいらしゃるかと思います。
 私の会社も例外でなく、企画・制作したゲームは、メディアミックスとして攻略本や原作小説は勿論のこと、深夜TVアニメやラジオ番組として放映されたり、果てはスナック菓子まで発売するまで手を広げていたのです。

 にもかかわらず・・・あっさりと倒産しました。プレステの一人勝ちになりつつある状況で、新作をサターンソフトとして出したのが間違いだったのだと当時は思いましたが(決して間違いではないですが)、実は主たる原因はそんな些末なことではなかったのです。
 その新作サターンソフトの売り上げがほぼ確定した時点(つまり新作の失敗が明確となった時点)で、コアバンクの一つが預金の凍結措置を取りました。後に問題視された、いわゆる「貸し剥がし」で、一つの銀行が引き揚げた途端、メインバンクをはじめとした銀行全てが横並びで預金凍結と新たな担保提示の要求に走ったのです。
 会社としては預金のみならず、開発機材・人員をはじめとした十分な資産があったにもかかわらず、運転資金がショート。預金凍結から僅か2週間で破綻に追い込まれたのでした。
 時はバブル崩壊後。山一や拓銀、日債銀・長銀といったビッグネームが破綻する2年前の話で、銀行・証券といった金融機関の『最後のあがき』の最初の犠牲だったと言えます。後に「失われた10年」と言われる長期不況の最中で、活況であった業種にあっても経済全体の流れには抗えなかったわけです。


 前振りが長くなりました。そんな「失われた10年」の決算を描いたドラマが、この『ハゲタカ』です。NHKの土曜ドラマは、かつては松本清張の「けものみち」や向田邦子の「阿修羅のごとく」といった名作、或いは城山三郎のシリーズ等、硬派で味のある作品を多く輩出した名作枠です。
 その期待に背かず、この『ハゲタカ』も民放ドラマが真似できない(というか何故真似できないんだろう…)、NHKならではの見応えのあるドラマでした。日本の銀行の不良債権を買い叩く外資の「ハゲタカファンド」が主題で、後にライブドアや村上ファンドの事件にも通じる「バイアウト」や「TOB」や「ホワイトナイト」といった経済事案を、実にドラマチックに描いています。

 そうした演出や脚本も優れていますが、なんといってもキャストの演技が素晴らしかった。元々NHKのドラマは、民放ドラマでありがちな大袈裟だったり馬鹿馬鹿しい演出・演技が少ないので私は好んで見るのですが、この作品はそれが際立ってましたね。
 記者役の栗山千明はちょっとイマイチでしたけど、他のキャストはどれもハマり役で、主役のファンドマネージャーである大森南朋や、破綻・自殺に追い込まれた旅館の主人役の宇崎龍童など、重みのある役どころを皆十分にこなしてらっしゃいます。
 個人的には破綻した旅館の息子という役の松田龍平の演技が特に良かったですね。破綻に追い込んだ大森南朋演じるファンドマネージャーに憧れと反発を抱くベンチャー起業家(恐らくライブドアの堀江貴文をはじめとした新興の起業家のイメージ?)という、複雑な役どころを自然に演じていて、素直に「スゲーなぁ」と思わせるものでした。

 惜しむらくは全6話のうちの前半(1~3話)で感じられたような濃密さや面白さ・緊張感が、後半(4~6話)では少々息切れしていたかなぁと感じたのも正直なところかなと。
 前半部分で語られている通り、企業再生には理想だけでは対処できない厳然たる現実があります(逆に現実だけの対処では人がついていかないという側面もあり)。「ドラマとしての結末」は出せても「企業再生方法の是非」の結論を出すのは極めて困難だと思うんですよね。
 エンディング曲の歌詞の「富は問題にならぬ」が理想だとすれば、ドラマ内での「誇りでメシが食えますか!?」という言葉が現実といえるでしょう。容易に結論(正否)の出せないこのジレンマこそが、このドラマの後半に物足りなさを感じざるを得ないところなのかも知れません。

 ま、その分前半3話のシナリオの濃さやスピード感、緊張感は絶妙で、神作品と言って良いかと。特に3話の最後、外資ファンドと対抗する三葉銀行の行員の柴野が辞表を提出するシーンは圧巻でした。私自身が技術職から法務担当などという職種に移り、汚い面を見る機会が多くなったからということもありますが、とにかくサラリーマンをやっている人間にはとても重く感じるセリフをを吐くのです。

「私は44(歳)です。人生の折り返し点はとっくに過ぎています。ですが…残りの人生、自分に言い訳しながら生きていくには長すぎます」

 こんなセリフ吐いて会社辞めてみてェなぁ(苦笑)。
 このセリフに対し、上司である銀行の専務、そして同僚の広報部長が切り返します。これらのセリフがまた、バブル景気を作り出した銀行側の象徴とも言えるシブくも重いものなのです。

「かっこええなぁ。お前はいつもかっこええ………だから駄目なんだッ!」
「お前は何も見えてない。いや、見ようとしてない。這いつくばって罵られて、それでも与えられた仕事を一つ一つこなしていく。そうやって生き続けた時、次が見えてくる。俺は最後まで三葉に残る。辞めないのも勇気だよ」


 言わば理想と現実のセリフのぶつかり合いと言えるでしょうね。
 上で書いた通り、どちらが本当に正しいのかは誰にも分からないでしょう。ただ、どちらがより望ましいと感じるかは人それぞれ自由です。それが、それぞれの仕事観や人生観なのですから。。。


 シナリオという点で難点、というか個人的に物足りなく感じたのは、貸し渋りや貸し剥がしを行わざるを得なかった日本の銀行が、何故そこまで疲弊しきったのかを描いて欲しかったなぁというところです。
 先の松田龍平演じる破綻した旅館の息子が「銀行は晴れた日に傘を差し出し、雨が降ると取り上げる」と呟く名シーンがあるのですがが、その"傘を取り上げる"部分についての理由を詳しく描いて欲しかったなぁと思うわけです。
 まぁこれを詳細に描くとなると、不良債権の元となったバブル景気時代の不動産融資から描写しなければならないので、とてもじゃないが6話では収まらないでしょう。ホイチョイ・プロダクションの「バブルへGO!」のような、バブル時代の「古き良き」を描くだけでなく(これはこれで面白いですが)、ツケを背負った原因を真面目に検証するようなドラマが出ないか、個人的には期待したいところです。

(余談ですが、そうしたドラマを作るなら山一證券を題材にすれば、バブルとバブル崩壊のみならず、高度成長やオイルショックをも含めた戦後経済史の大河ドラマが容易にできるはずです。どこか作ってくれないですかねぇ^^;)
(更に余談。山一證券と長銀のかつての本社ビルがエンディングロールのバックで映っています。なんとも皮肉な演出ですね・・・)


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PCやクルマ等のイジり、それにビールと深夜徘徊を愛する。酸いも甘いも辛いも何でも食うロクでなし。

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